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続・ネコフリート

Always Look on the Bright Side of Life

2018. 04. 01

月蝕 2018年4月1日更新分 『若宮トウヤの休日』



!!!注意!!!



・この更新分はおまけです。
特に読まなくても進めるヤツなので、読みたくなければ全然読まなくても構いません。





・8700字くらいの番外編です。
・本編追いついてなくても読めるとは思いますが保証はしません。
・BWの主人公のトウヤくんとは一切合切関係がありません。
・月蝕本編とも一切合切関係がありません。
・本編との温度差が激しいため、読んだ後は速やかに頭を殴って忘れてください。
・下ネタが苦手な人はお願いですから見なかったことにしてください。




Q.どうしてこんな本編の雰囲気ぶち壊すようなことをするんですか?
A.シリアスに耐え切れないんです!!すいません!!すいません!!




いけそうな人だけ、改めて更新日付を確認し、ご理解の上でどうぞ!












――若宮トウヤの休日 





 ひとつ断っておきたいのだが、これは僕の『夢』なのである。
 夢と言うのはつまり、将来どうなりたいとかこうなりたいとかそういうアレではなくて、眠っている間に見る方のアレだ。僕は今眠っていて、夢の中にいて、更にこれが夢であることを自覚している。所謂『明晰夢』と呼ばれる現象である。先程ふと目が覚めて、まだ朝も早かったので、僕は二度寝を決めることにした。目が覚める直前まで経験していたシチュエーションがとても好みだったので、夢の続きを見れますようにと思いながら眠りについた。そして晴れて、夢の続きを見ることに成功したと言う訳なのである。この、一度覚醒してからもう一度眠るという行為は、明晰夢を見るための重要なポイントのだが、まあそれはいいとして、明晰夢を見ている間、夢の内容を自在に操る能力を有する人が存在する。――実のところ、僕はまさに、涙ぐましい努力の末にこれを会得した、選ばれし能力者なのだ。
 ということで、僕は今、ビシッと髪を固めて、かっこよくスーツを着こなして、薔薇の花束を抱えて、イッシュ地方はヒウンシティのオシャレな街角に立っている。
 ……いや、だから、夢だから。夢だから大丈夫だ。ぶっちゃけ僕が寝ているのはココウとかいう三階建ての建物もないド田舎だし、イッシュなんか行ったことないし、ここだけの話スーツも着たことがないし、薔薇の花束を抱えているとか現実だとするとウッカリ気が狂いそうになるが、大丈夫だ。なぜならこれは、夢なので。夢の中の僕は、きっとそう、ヒウンとスーツと薔薇の花束が似合うダンディなイケメンに違いないのだ。
 正直ヒウンシティという街がどの辺にあるのかもよく知らないのだが、写真で何度か見て憧れたことがあるだけのヒウンシティの街並は、なんかもう凄い、光り輝いている。空飛ぶ車が普通に走り回っているし、にょきにょき伸びたビル群が空にぶすぶす突き刺さっているし、目の前の床は自動的に動いている。さすが大都会。その床の上をミソラっぽいものが自動的に流されている。ヒウンシティは多分外国なので、多分ミソラみたいな金髪碧眼の美男美女ばかりがひしめき合っている街のはずだ。僕にはミソラ以外の白人の顔が殆んどインプットされていないので、想像上のヒウンシティは、通行人が全員ミソラっぽくなってしまう。まあココウ近辺の人種が普通に歩いていては萎えてしまうので、そこは目を瞑ろう。そこは目を瞑って、具体的な設定を詰めよう。僕は明晰夢を自在に操る能力の持ち主だ。これから見る夢の中で現実が到底及ばない素晴らしい体験をするために、初期設定は重要である。
 まずはスーツだ。スーツ、スーツ、ええと。ココウに住んでいると縁がなさすぎて、自分の知識だけで具体的に補完することが難しい。適当でいいか。ブラックのシャークスキンに、冴えた白シャツ、ドクロをあしらった銀のカフスが輝く。真っ赤に映える蝶ネクタイ、テラッテラのラメッラメの、総スパンコールの紫スーツ……あれ、黒なのか紫なのかどっちなんだ? というかスパンコールって何だっけ? まあいいか、こんなことで悩んでいる間に目が覚めたら勿体ない。次は、薔薇の花束だ。本数はええとそうだな、よく分からないが適当に、ざっと一万本くらいでいいだろう。真っ赤な薔薇で、えーと後は……なんて悩んでいる間に、お、来た来た。
 大小無数のミソラの間を縫うように、待ち人が、少し慌て気味にこちらへ向かってくる。僕はクールに片手を挙げた。
 ――うっわ、やっべ、遠巻きでもめっちゃかわいい。
 おっと、つい本音が……いや、いいか、これ、夢だし。他に誰も見てないし。今誰にこの状況を説明しているのかもよく分からないし。明晰夢を見るための重要な訓練として『夢日記をつける』というのがあるのだが、僕は多分、起きたらこの夢をこのまま夢日記につけるのだろう。そんなことはいいとして、息を切らして目の前にやってきた彼女が、潤んだ瞳で僕を見上げてくる。僕はその顔を覗きこみながら、柔らかな頬に手を添え(うっわっ触っちゃったすごい! あったかい! やわらかい! うわあ!! 夢、最高!!)、いかにもこう、落ち着いた……余裕のある……包容力のある……声で、言うのである。
「どうしたんだ、そんなに急いで……、よっぽど僕に会いたかったのか? ハニー」
 そう、そうそんな感じのカッコイイことを……大丈夫、大丈夫夢だから。彼女は蕩けた表情をぽっと高潮させて、恥ずかしそうに、僕の胸に飛び込んでくるのである。
 ぼふん。
 ああ、――――ああ!


  も  ふ  も  ふ  だ  ……!


 アッやばい顔が……鼻の下が……いや大丈夫、再三になるがこれは夢の中なので、夢の中の僕はどんな時でもクールでダンディでイケメンなのだ。これは夢の中なので、僕は僕の胸の中に自ら収まってきたそのもふもふを、両手で包み込んで、抱きしめる事さえ、許されるのである。あー。ああ~っ! いいだろちょっとくらい! だってこれは夢だから!
 通行人の大小無数のミソラ達が、こちらに気付いて、騒ぎ始める。
「あ、あれはまさか……!」
「今を時めく若干十八歳の敏腕美少女ブリーダー……!」
「『茅ヶ崎 リイナ』……!」
「地に立つ妖精、フェアリー・リイナ……!」
「……の……!」
 大小無数のミソラ達が、ゴクリと生唾を呑んだ。
「パートナーのチルタリスじゃないか……?!」
 ――変装がバレ(たった今変装をしている設定になったので、彼女は大きなサングラスをかけている)、胸の中の彼女がビクつく。だがここまでは想定内だ。何と言っても、彼女の美貌、麗しさ、美しさ、儚さ、可愛らしさ。愛しさと、切なさと、心強さと、……そしてエロス……リビドー……セクシュアル……等々のこの溢れんばかりのオーラは、大きなサングラスくらいで掻き消せるものではない。まさに芸能人オーラと呼ぶべき神々しさが、彼女の全身から放たれているのである。
 ミソラっぽいものの言う通りだ。間違いない。彼女は、今を時めく敏腕美少女ブリーダー、フェアリー・リイナこと茅ヶ崎リイナ、の、かの有名なパートナーポケモン、チルタリス――――そして、僕の、『ハニー』なのだ。
 そう、僕と彼女は、付きあっているのである。
 結婚を前提とした真剣なお付き合いをしているのである。
 お忍びで。
 かの有名なチルタリスがいるとバレた途端、大小無数のミソラたちがこちらに押し寄せてくる。怯えて身を竦ませる彼女を庇い僕は両手を広げた。
「やめてください! プライベートなんです! プライベートなんです!」
 その時無数のフラッシュが瞬く! クソッ、パパラッチか……!! だが、スクープを逃すまいと浴びせられ続けるフラッシュの眩しさも、皆の憧れのアイドルを独占することに対するバッシングの声さえ、なんだか気持ちいいぜ……! 僕は1万本の薔薇の花束を担ぎ、総スパンコールの紫スーツを翻し、彼女の背中へとひらりと飛び乗った!(うわっ跨ってしまった うわー ヤバイ ヤバイ)
「観客が多いな。それじゃあ今日は、二人っきりの空中デートと洒落込もうぜ、ハニー!」
 彼女が頷き、一気に空へ舞いあがる。フラッシュの光と、大小無数のミソラの金髪の輝きが、みるみるうちに遠ざかっていく! 今や遥か下方に見える夜のヒウンシティ(あ、夜だったのか。てっきり昼かと思っていた)に、その光たちは星空のようにきらきらと輝く……そして見上げると満天の星空。一望できるヒウンシティの街並に関しては知識がないのでかなりボヤッとしているが、とにかくロマンティックな景色の中で、ついに僕たちは二人きりになることができた。軽やかに、楽しげに、やわらかな綿の翼をゆらめかせながら空中遊泳を続ける彼女の首筋に、僕はそっと寄り添い……鼻を埋める……思いきし吸い込む……それはまるで、しっかりと日に干した最高級羽毛布団のようであり、燦々と降り注ぐ太陽をめいいっぱいに吸い込んで花開いた野原のタンポポのようでもあり。ごく自然で優雅な上品さとしなやかな生命力を兼ね備えた、まさにこう、理想通りの……理想通りの匂いを肺満杯まで僕は詰め込む。そりゃ理想通りだろう、なんたってこれは夢だからな。夢、最高!
 彼女は首を曲げ、顔をこちらに向けてくる。この漆黒の夜空の中でもなんと美しく、無垢で麗しい瞳なのだろうか……爽やかな夜の風を浴びながら、僕らは暫し見つめ合った。言葉を交わさなくとも分かる。彼女もまた、僕と同じように、この時を待ち望んでいたに違いないのだ……ふたりきりで、肌を重ね合せることができる瞬間を。
 彼女の主、そして彼女もまた、ポケモンブリーダー界隈では誰もが認めるトップスターだ。ポケモン、特にドラゴンタイプをこよなく愛好する僕も、以前はあの観衆やパパラッチたちと同じように、写真越し、雑誌越し……或いは輝かしいステージの下から、一心不乱に愛を投げかけることしかできなかった。だが今や、あの美しい体毛、優雅な翼、あどけない瞳、魅惑的な笑顔、その体温も、くちばしさえ、全てがここにある。彼女は、僕のものなのだ!
 さてさて、二人のデートはまだ始まったばかりだ。今宵の逢瀬、僕は必ずや彼女を満足させてみせよう。勿論僕は、薔薇の花束以外にも、彼女のために色々とプレゼントを用意してきた。まずはあのヒウンタワー(ヒウンシティに詳しくないので、今考えて適当に名付けた)の最上階にある夜景の見える最高級レストランで、二人きりの豪華なディナーを楽しむ。いや、クルーズディナーでもいいな。内陸のド田舎に住んでいるから、高い建物とか、海とか船とか、あと夜景とかにはめちゃくちゃ憧れがあるのである。あとはなんか、シャンパンとか、ワインとか、シャンパンとか……あとはシャンパンとか……
 その時――僕の脳内に、突然、聞き慣れた声が鳴り響いた。
「お師匠様、いつまで茶番やってるんですか。ちょっと長すぎますよ今年」
 なっ……!? この声は、ミソラ!? こいつ、僕の脳内に、直接……!?
「あ、ネタバラシまだなんですか? まだ続けるんですかこれ、仕方ないなあ。すいません間違えました。えっと、おばさんが起きろって言ってますよー。あと、今、下に、タケヒロとレンジャーさんと、あとグレンさんも来てますから」
 嘘だ! そんな嘘で僕を起こせると思ったら大間違いだぞ。こんな朝っぱら(夜だけど)からうちに皆が大集合する訳ないだろう?
「そこは嘘じゃないんですけど……っていうか、もう昼前ですよ」
 ええい、うるさい! ミソラの声に掻き消されるように、景色がユラユラと滲み始める。夜中のはずなのに、視界が明るくなってくる。なるほど外は完全に明るくなっているらし、ハッ、しまった! このままでは覚醒してしまう。ダメだ、僕はまだ彼女との秘密のデートを楽しむんだ! チルタリスのもふもふをしっかと抱きしめて、僕は必死に抵抗した。抵抗の甲斐あり、再び視界が色濃く形を取り戻していく。よかった、覚醒は遠のいたようだ。
 取り乱した僕を案じたのか、彼女が不安げな上目づかいで僕を覗きこんでくる。ごめんなハニー、心配させて……そっと頭を撫でてやると、優美かつ可愛らしい二本の長い飾り毛がみこみこと動いた。そして首を伸ばし、甘えるように僕の胸元にくちばしを寄せてくる……その様を見、僕は決意した。
 よし、抱こう。
 ディナーとか、クルーズとかは、カットしよう。というか行ったことにしよう。二人はヒウンタワーの最上階あるいは豪華クルーズでおいしいディナーを楽しみ、少しのアルコールを嗜んだ(夢の中の僕は酒に強いはず)。だからこれから予約済みの超高級ホテルに向かうのだ。これは夢なので、僕は明晰夢の支配者なので、そのくらいは余裕である。向かうというか、もう着いた。もう部屋に入った。シャワーも済ませた。このくらいはショートカットしないと、肝心な部分を楽しむ前にリナとかヴェルとかに叩き起こされる危険がある。
 これは夢なので、今は夢の中なので、僕はこれから、決して現実では起こり得ない、ドキドキワクワクのすっばらしいファンタスティックな体験をするのだ。
 さっきまで夜空を飛んでいたのだが、もうベッドに押し倒している。ふかふかのベッドの上に、更にもふもふな彼女の羽毛が広がって、そしてムード満点の照明に浮かぶ彼女の表情は、悩ましいまでの色香を放ち、熟れた頬、潤んだ瞳で僕を誘ってくるのである……! おお、ファンタスティック……! ああ、夢、いいなあ。夢、最高だなあ。もう何分もしたら夢から醒めちゃうなんて考えたくないなあ。ずっと夢の中にいたいなあ、現実つらいもんなあ。めっちゃつらいもんなあ。永遠に夢に酔いしれていたい。永眠したい。なんつって、ハハッ。なんて考えながら、そっと首筋に、優しく、指を這わせると、ぴくんと、彼女の身体が震えた。
 あ、ヤバい。ダメだ。
 めっっちゃエロい。
 ダメだ……僕は紳士なのに……少なくとも夢の中の僕はクールでダンディでジェントルメンのイケメンなのに……ちょっと優しくできないかもしれない。これから僕は、彼女の尾羽をいやらしく■■■(自主規制)してそのあと翼の付け根をねっとりと■■■(自主規制)してから遂に■■■■■■■■■(自主規制)彼女の■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■(自主規制)、とりあえず、とりあえず始めよう、考えるより行動だ、夢が覚めたらマズいから! 夢だから大丈夫! 頬に手を添え、そっと顔を近づける。薄く開いた純白のくちばしの間から真っ赤な舌先が覗いている、あっ、それ、めっちゃエロいっすね。最高です。夢、最高。本当にありがとうございます。
 総スパンコールの紫スーツのズボンのチャックへ、手をかけつつ。
 では、いただきまー……
 ガチャッ。
 扉が開く音がした。
 振り返ると、そこには、ハヤテが立っていた。
 ……ん? あれ? ハヤテ? なんだこの展開は?
「ハヤテさん……!」
 彼女が、突然ヒトの言葉を喋って、突然飛び起きて、突然乱入してきたハヤテと、突然抱き合った。
 そして突然キスをした。
「え?」
 ベッドの上で総スパンコールの紫スーツのズボンのチャックへ手を掛けたまま呆然としている僕の前で、ハヤテと彼女は何度もキスを交わし、激しく求めあい、な、なんと舌を……! ああっ! 目を覆いたくなるような凄惨な光景がそこに! お、おい! やめろ! なんだこれ! っていうか待て、あれここ高級ホテルじゃないな、僕の部屋のベッドだな、いつもミソラが寝てるベッドだな。何いつもミソラが寝てるベッドでポケモン抱こうとしてるんだよ僕。いや待て、待て待て、なんだこの展開?
「あ、……気付いたな」
 部屋の戸の向こうからタケヒロがどん引き気味の顔を覗かせる。なんでタケヒロがいるんだ。その後ろからダッシュでハリが飛び込んできて、
「――あなた、裏切ったのねッ!!」
 ヒト語で叫んだ。
 というかレンジャーの声で叫んだ。ハリの声がレンジャーの声で聞こえてくることに、僕はここまでで一番驚愕した。どうなってんだ僕の深層心理。
「わたしというものがありながら、不倫なんて、あなたサイテーな男ねッ!」
「いやちょっと待ってくれハリ、誤解なんだ、彼女とは、僕は何も、え、不倫……? え? なんて?」
「週刊ブン○ュウです! 不倫ですか!? 彼女との関係は!? 一線は越えたんですか!?」
 大小無数のパパラッチミソラが、ストロボを瞬かせながら雪崩れ込んでくる(※フラッシュの点滅にご注意ください)。そして背後で爽快な音を立て押入れの襖が開いた。
 スパーン!
 やせいの カナミが あらわれた!
「私との関係は遊びだったのね!?」
「えっうわっびっくりした」
 スパーン!
 やせいの レンジャーが あらわれた!
「私との関係は遊びだったのね!?」
「いやそれは正直悪かったと思っ」
 スパーン!
 やせいの おねえちゃんが あらわれた!
「私との関係は」
「ダメだって! それはダメだって! シリアスなるからダメだって!」
 スパンスパンスパン! と連続で襖を閉め(そもそも僕の部屋に襖は二枚しかないはずなのだが)、眩いばかりのフラッシュの中、振り向く。大小無数のミソラの向こう、戸のあたりで突っ立っているタケヒロはまだどん引きしている。
「どうして僕に突っ込ませるんだよ! タケヒロが突っ込めよココウ組唯一のツッコミ担当だろ!」
「ご、ごめん俺、もうダメだわ……今回無理だわ……完全に俺のキャパシティ越えてるわ……」
「諦めるなよ! エイプリルフールくらい元気なタケヒロでいてくれよ(本編参照)! 頼むタケヒロ、一刻も早く僕に突っ込んでくれ……いつもみたいに……ほら! さあ!」
 総スパンコールの紫スーツ(いつまで着てるんだろう)の両手を広げ、顔面蒼白の僕が叫ぶ。タケヒロは怯えた様子で黙り込んだ。僕は痺れを切らした。
「――僕は突っ込まれるの専門なんだよ!!」
「突っ込まれるの専門って言ったか!?」
 二階の窓から、颯爽とグレンが飛び込んで、颯爽と窓枠で懸垂を始める。見せびらかされる筋肉にパパラッチたちが一斉にシャッターを切った。バシャバシャバシャバシャ!
「今、突っ込まれるの専門って言ったか!?(二回目)」
「過剰反応やめろ!」
「突っ込まれるの専門とはどういう意味ですか!? 誰の指示で行われたんでしょうか! 忖度はあったんでしょうか!」バシャバシャバシャバシャ!
「申し訳程度に流行を取り入れるのもやめろ!」
「ご当地三点倒立~!!」
「やめろ! クソ雑パロディもやめろ!」
 チッ、タケヒロまでボケはじめてしまった、僕の手には負えない! そ、そうだ、これは夢だから……夢から覚めればいいんだ!
 僕は目を瞑り、咄嗟に自分の頬を抓った。
 痛かった。
 目を開けた。
 そこには、相変わらずベロチューを続けているハヤテとチルタリスと、ムキーッという感じの顔でハンカチを噛んでいるハリと、大小無数のミソラ達と、三点倒立しているタケヒロと、窓枠で黙々と懸垂しているグレンと、襖の間からこちらを見ているカナミと、レンジャーと、お姉ちゃんがいた。
 ……。

 ……。




 ………………?




「夢じゃないですよ」
 パパラッチのミソラが、カメラを下しながら言う。
「夢じゃないですよ、これ。現実ですよ」
「……現、実……?」
「そうですよ。だって自分で言ったじゃないですか、お師匠様。明晰夢なら、自分の思い通りにできる、って」
 絡みあう舌、粘着質な音と、懸垂するグレンの腕から滴り落ちる汗の音と鼻息だけが、部屋に響く。その気味の悪い空間を、終わらすように、僕は願っているのに、一向に景色は薄らいでいかない。
 これは、夢、じゃない――つまり。
「現実ですよ。見ていましたから、皆。あなたの独白も、全部。キモい妄想垂れ流してるところも、自主規制沙汰になってるとこも」
「え? いやでも、あれだろ、この後飛び起きて、ハッ夢か……っていう流れ、やるんだろ、どうせ」
「それ既に本編でやりましたから(※2-1)」
「いやいや、でも、じゃああれだろ、こう、全部幻でした~みたいな……幻覚見てるみたいな……疲れてるな~みたいな……」
「それも本編でやったんで……(※8-2)」
「え……?」
「現実ですよ。お師匠様。現実を、受け入れないと」
 触れたら、きっと冷たいのだろう、ミソラの冴え渡る蒼穹が、僕を冷やかに射抜いていた。

「逃げられませんよ。現実からは」








「……――ハッ……」

 ――僕は、布団から飛び起きて、そして、あの台詞を言った。

「……夢、か……」

 ああ、よかった。
 ほら見ろ、夢だったじゃないか。
 なんだったんだ今の夢。
 大量の冷や汗で寝巻も髪もぐっしょりである。顔を上げると部屋には誰もいないし、戸のあたりにも誰もいないし、窓枠では誰も懸垂していないし、その向こうには爽やかな青空が広がっている。襖も閉まっている。一応確認してみたが、ハヤテもハリも、ボールの中に収まっている。
 ……助かった。いやあ、助かった。
 なんだかとんでもない夢を見た。何か前半にはいい思いをしていた気がするが、後半に酷い目に遭いすぎて、もう大体忘れてしまった。夢っていうのは、起きた瞬間から、不思議なほどの勢いで記憶が薄らいでいくものだな。今だって、前半にしたいい思いのことを必死に思い出そうとしている間に、後半に遭った酷い目のことも具体的には忘れてしまった。なんだか酷い目に遭った、という倦怠感だけが、ずっしりと体中に残った。
 トウヤ、いつまで寝てるんだい、お客さんだよ。おばさんの声が階下から響いてくる。時間を確認するとすっかり昼に差し掛かっている、僕は慌てて適当なシャツに着替えて、階段を駆け下りた。
 おばさんに招かれて酒場に出ると、ミソラ、タケヒロ、レンジャー、グレンが、揃い踏みで、テーブルを囲んでこちらを見ていた。
「……ん?」


『えっと、おばさんが起きろって言ってますよー。あと、今、下に、タケヒロとレンジャーさんと、あとグレンさんも来てますから』

 
 夢の中で聞いたのだろうか、ミソラらしき声の残響、僕の頭を揺さぶってくる。
 僕の顔を見、ミソラが指を指し、こちらに聞こえない声でひそひそと何かを言った。タケヒロが、レンジャーが、グレンが、一瞬テーブルへと視線を落とした。それからまたこちらを見て、揃いも揃って、失笑を浮かべた。
 ……な、なんだ。なんなんだ。皆ニヤニヤしている……一体、テーブルに置かれている、それは何だ?
 テーブルの真ん中に置かれている一冊のノート、そこに書かれた表題へ、僕は目を凝らしてみる。
『夢日記』
 僕は立ち止まった。
 ……待て。待ってくれ……。一体なんだそれは。一体どこから……それは……僕の……
 立ち竦む僕を、彼らはひたすらに、ニヤニヤしながら眺めてくる……


 ニヤニヤ……


 ニヤニヤ……


 ニヤニヤ……




(END)











***

Q.メグミはどこですか?

A.チ



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